革新性と使い勝手の良さを旗印に、急成長を続けている購買ソリューション「クーパ(Coupa)」の年次シンポジウム(11月19日, 東京・六本木)が開催されます。間接材購買システムの導入を検討中の企業にとって、著名日本企業に採用内定と噂もある製品を知る絶好の機会です。
2019 Coupaジャパン・シンポジウム: https://get.coupa.com/JAPAN2019.html
しかし一方で、Coupaの状況は日本市場でまだあまり知られていません。そこで「クーパとは何なのか、その現状はどうか」を整理してみます。
- 日本市場OK: 噂では日本の著名企業がCoupaの採用を内定、競合製品から置き換えへ
- 製品比較評価レポートで、Coupaがダントツのトップに
- “AI, BIの次はCIだ”…Coupaが打ち出す革新性
- 業界筋を熱狂させるビジネスモデル…Coupaが勝ち馬になりそうな理由
- 年率4割の急成長…Coupaはもはや弱小新興企業ではない
1.日本市場OK: 噂では日本の著名企業がCoupaの採用を内定、競合製品から置き換えへ
クーパ・ジャパンからは正式に教えていただいていませんが、駆け巡っている噂があります。昨年の三菱重工での採用に引き続き、日本を代表する著名企業でCoupaの採用が内定したとのこと。信憑性は高い様子で、コンサルティング会社などでは「おぉっ」との動揺が生じています。
本音を言うと、昨年11月の製品お披露目シンポジウムの状態では、Coupaの日本市場進出には不安がありました。しかしわずか4か月で対応してしまったことは「Coupa(クーパ) is READY! ~ 十分な比較検討のうえに、実りある購買ソリューションの導入を(2019年4月)に記しました。
それに加えて、今回の著名日本企業で採用の噂。これを契機にCoupaの日本市場導入がいよいよ進んでいきそうです。しかし日本企業、さらに世界中の企業が、なぜ次々とクーパの採用に踏み切るのでしょうか。その理由をもう少し掘り下げてみます。
2.製品比較評価レポートで、Coupaがダントツのトップに
7月末に大きなニュースがありました。定評あるガートナー社の製品評価レポート「Magic Quadrant for Procure-to-Pay Suites 2019」で、クーパがダントツのトップに立ったのです。これまで3年ほどは、AribaとCoupaの2強状態が続いてきました。その均衡が2019年に破れました。
使い勝手の良さ(Easy to use)と革新性(Innovation)、レポートが特に強調するクーパの優位性はこの2つです。
「使い勝手の良さ」は、以前からのCoupaの強みです。例えば「クーパはとても仕事に便利で、即座に支出状況がわかるといった使い勝手の良さがあるのです(Coupa is a very business-friendly system and easy to use with instant spend transparency)」といったコメントが、これまでも多く寄せられてきました。しかし機能面の優位性は追いつくことが可能です。例えば、競合製品のAribaはCoupaに類似した画面イメージへと製品を改良してきています。「やっぱり大手には追いつかれてしまうのか」と思われるところもありました(但し、クーパが他社が飲み込めない企業規模に達していることは、後述)。
しかし「革新性(Innovation)」はどうでしょうか。今年のガートナー社レポートでは、Coupaの革新性として以下の2点をあげます。
・システム内のデータを集計して、ベンチマークやインサイトのデータ比較が行われ、それに対する推奨対応策が提示される
・有用な新機能を次々と提供する革新さがある
3. “AI, BIの次はCIだ”..クーパが打ち出す革新性
自社の出来具合が、他社と比べてどうかが重大な関心事になるのは、国内外ともに変わりません。井の中の蛙では堪りませんし、経営マネジメントも達成成果の客観的な証明を求めてきます。そのため、調査会社レポートを購入するなどの対応をこれまでも各社は迫られてきました。しかし自社の目標対実績の比較に加えて他社との実績比較を、Coupaが追加支出なしに「コミュニティ・インテリジェンス機能」として提供してくれるとなると便利です。
すこし長くなりますが、前述の4月のブログ記事から引用します。
加えて、Coupaには独特の興味深い機能、コミュニティ・インテリジェンス機能があります。この機能について、少し記述してみましょう。
誰かが選んだ選んだサプライヤー群(実はバイアスがかかっているかもしれない)よりも、みんながいいと言っているサプライヤー群の方が信頼性が高いのかもしれない。あるいは特定機関の調査データよりも、みんなの実態を反映したデータの方が精度が高いかもしれない。このような導入企業での実際値を重視するCoupaの「コミュニティ・インテリジェンス」の考え方は、「特定の権威・制度に基づく信頼(Institutional Trust)」ではなく、ウーバーやエアビーアンドビーの相互評価付けのような「脱中心化された信頼(Distributed Trust)」へと世界は移行しているとした、レイチェル・ボッツマンのベストセラー「トラスト(原題: Who Can You Trust)」の考え方に通じるように思えます。
実際の例で見てみましょう。以下は前述のインサイト画面に表示されている内容です。 インサイト画面では、「節減」、「効率性」、「定着度」の3つに区分されて、主要な業務管理指標(KPI) が縦に並びます。一方で横軸には「現状(自社実績値)」、「目標(自社目標値)」、「傾向(実績の時系列)」といった自社の値が表示されます。各種の業務管理指標(KPI)の自社の状況が、このようにリアルタイムで把握できるだけでも、Coupaの「インサイト」は魅力的な機能です。
しかしそれだけに留まりません。その右横にある「リーダー」という項目が、Coupaの特長的な部分です。ここにはCoupa導入先全体のうちの上位企業での実績値が表示され、自社実績値との比較 (ベンチマーク)できるようになっています。せっかく購入した調査会社レポートの値が自社にマッチしていないように感じることは少なくありません。しかし、他社のCoupaユーザーでの実際の値が比較データとして提示されるとなると、かなり説得力が増すのではないでしょうか。
業務管理指標(KPI)の比較に加えて、Coupaではユーザー群(コミュニティ・インテリジェンス)の力をサプライヤー管理にも活用します。例えば、Coupaでは他社が利用しているサプライヤーを検索し、そのサプライヤーに他社がどのような平均評価点(5点満点の星の数)をつけているかを見ることができます。他社の評価がわかれば、それを優良な新規サプライヤーの発掘への適用、あるいは取引中の自社サプライヤーのリスク兆候の把握(他社が予期せぬ低評価をしている場合など)に利用できるようになります。
Aribaの場合は、「Aribaネットワーク」という制度(仕組み)にAribaが登録・管理しているサプライヤー群を使うことを求められます 。それに対しCoupaではこのような口コミ的な、コミュニティ・インテリジェンスでのサプライヤー状況の共有方式が採られます。前述の「トラスト(Who Can You Trust)」で示された「制度に基づく信頼」と「非中心的に分散された信頼」という概念のどちらに基づくかの思想的な差異が、両製品には存在しているようです(全社がAriba、後者がCoupa)。
Coupa(クーパ) is READY! ~ 十分な比較検討のうえに、実りある購買ソリューションの導入を(2019年4月)
ユーザーにとっては気の利いた便利な機能です。加えてCoupaは定期的に13個の業務管理指標(KPIs)の比較(ベンチマーク)のホワイトペーパーも提供しています(日本語化もされています)。社内資料作成などにも有効活用できる便利な資料です。
しかしCoupaが、6月の年次コンファレンス「Coupa Inspire’19」で「“AI, BIの次はCI(Community Intelligenceだ”」と声を高くし、さらには独自景況感指数(The Coupa Business Spend Index)の発表を始めるに至って、皆が気づき始めました。「“AI, BIの次はCI(Community Intelligenceだ”」には、実は深慮があるのではないかと。
4.業界を熱狂させるビジネスモデル…クーパが勝ち馬になりそうな理由
実はCI(Community Intelligence)は、Coupaの持続的競争優位を確保する強力な参入障壁として機能するのです。上図は、参入障壁の構築に関する、私のスタートアップ企業向けテキストからの抜粋です。
Coupaは一定規模(クリティカル・マス)のユーザーを確保し、そのデータを統計的に用いて、自社に留まらbない他社ユーザー分を含めた業績管理指標(KPIs)の提供を行っています。ガートナー社レポートでも長所にあがる好評な機能です。
一方で、様々な購買ソリューションの新しいベンダーが誕生しています。もしかすると、それらは将来Coupaの有力なライバルになるかもしれません。でも彼らのユーザー規模は、まだCoupaに届いてはいません。ということは、提供できる業績管理指標(KPIs)の精度や集計範囲はCoupaに劣ります。一方で、より良い業績管理指標の提供を望む顧客が流れ込む先は、Coupaにますます集中します。となると新興勢力がCoupaに追いつくことは容易ではありません。
既存勢力のAribaやJaggaerもCoupaのCI機能への追随が行えていません。両社とも、クラウドの以前に、ユーザー自社企業に導入する形態(オンプレミス)での事業を行ってきた企業です。契約上もしくは技術上の何らかの制約があるのではと推測できます。
そして結果はCoupaの一人勝ちになります。
Coupaのビジネスモデルには、このような独特の革新的な仕組みが多く含まれているようです。そして、このようなCoupaのビジネスモデルの卓越性に気が付いたところ、例えば有力情報提供会社のSpand Mattersは、このような斬新な仕組みを生み出すCoupaの社内組織機能の研究記事の連載を始めました。
なお、Spend Mattersの記事でCoupaの3つのSpecial Forces Teamsの1つとして紹介された「Value Engineering」チームの紹介は、今年のシンポジウムに含まれています。
5.そして年率4割の急成長…Coupaはもはや弱小新興企業ではない
このようなCoupaの革新性は、Coupaが継続的に年率約4割の急成長の原動力にもなっています。下の「クーパの収入(Revenue)推移」のグラフをご覧ください。
2019会計年度の収入で、CoupaはSAP Ariba+Fieldglassの4分の1に達しました。さらに2年後には半分弱に至る見込みです。Coupaはもはや弱小新興企業ではなく、企業規模でも大手3強(Ariba, Coupa, Jaggaer)の一角を占め、さらにものすごい勢いで成長を続けている状態です。
なお、購買ソリューション各社の市場評価と経営状況比較は、英語ですが「Gartner 2019 Magic Quadrant for Procure-to-Pay Suites (with Valuations)-Software Platform Consulting」の記事が参考になります。
2019年シンポジウムの開催概要
導入する購買ソリューションは導入企業ごとに適性があり、Coupaの無理強いはありえません。しかし、購買ソリューションの導入検討では、Coupaを比較検討に加えないと手落ちになるリスクが大きくあります。その点でも、2019年シンポジウムは、情報収集の良い機会になると考えます。
日時: 11月19日(火曜日)午後
場所: グランド ハイアット東京
申込先: https://get.coupa.com/JAPAN2019.html
議事日程:
13:00 – 13:50 | 受付&ご歓談
13:50 – 14:00 | 開会挨拶 大熊裕幸(クーパ・ソフトウエア合同会社代表)
14:00 – 14:30 | ビジネス支出管理に関する一般セッション
Steve Winter(Coupa CRO(最高収益責任者)
14:30 – 15:00 | ユーザー様事例:三菱重工業(株)様、(株)野村総合研究所様
15:00 – 15:15 | 休憩(ご歓談)
15:15 – 16:00 | ビジネス支出管理プラットフォームのデモ
山田由香里(クーパ・ソフトウエア合同会社、
バリュー・ソリューション・コンサルティング)
16:00 – 17:00 | お客様の成功事例の紹介
アクセンチュア、 デロイト トーマツ コンサルティング、
KPMGコンサルティング
17:00 – 17:30 | クーパ・バリュー・エンジニアリングの紹介
Kalim Khan, Regional Vice President, BVE
17:30 – 17:40 | 閉会挨拶 大熊裕幸(クーパ・ソフトウエア合同会社代表)
17:40 – 19:30 | ビジネス交流会